受け継がれるナス——真仙中長と、母の記憶

2026年5月4日(月)

真仙中長というナス苗です。

宮木野では古くから栽培されてきた品種ですが、近年はあまり見かけなくなっています。
育てやすく収量の安定した新品種が広まり、こうした在来のナスは徐々に姿を消しつつあるのかもしれません。

それでも、母がこのナスに強いこだわりを持っているため、今年も育てることにしました。
味や食感だけでなく、記憶や習慣も一緒に受け継がれていく——そんな野菜だと感じています。


在郷には、ナスにまつわる言い伝えがいくつも残っています。

たとえば、
「ナスの出来が悪い家には死人(しびと)が出る」——そんな少し物騒な言葉もあります。

また、
「一番花や最初の実は取らずに残せ」という教えも伝えられています。
これは、今の栽培方法とは逆の考え方ですよね。

こうした言い伝えは、理由がはっきりしないまま、それでも大切に守られてきました。

母の旧姓は「平山」です。
このあたりには平家の落人伝説があり、母の実家の近くには「平山」や「瀬戸」という名字が多く見られます。

こうした言い伝えも、どこかでつながっているのかもしれません。。
母もまた、ナスにまつわる戒めを、意味を深く考えることなく守ってきたようです。

ナスの収穫を通じて、母の母——つまり祖父母から受け継がれてきたものなのでしょう。

さて、この「真仙中長」には鋭い棘があります。
ときどき指に刺さって、思わず手を引っ込めることもあります。

最近は棘のない品種もあると聞きますが、このナスは違います。
風の強い日には倒れやすく、栽培もしやすいとは言えません。

母は、この品種を作る理由を「茄子漬にするから」と言います。
けれど、その茄子漬を作る体力も、もう残っていないように見えます。

それでも育て続ける理由は、きっと私にはまだ分からないものなのでしょう。
——とりあえず、黙って育ててみようと思います。

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